平成26(2014)年2月に「監査基準の改訂に関する意見書」が公表され,新たに監査意見として準拠性に関する意見を公表することができるようになった。これは監査目的の多様化に伴う監査業務のあり方が見直された結果,監査意見表明の枠組みとして適正性と準拠性があることが示されたものである。
改訂監査基準の「監査の目的」は,財務諸表監査に際して適正性に関する意見の表明を原則とし,場合によっては準拠性に関する意見を表明することもあり得るという構造になっていると考えられる。
本稿では,監査基準委員会報告書に示された適正性と準拠性の定義について,改訂監査基準の「監査の目的」の構造および「財務情報等に係る保証業務の概念的枠組みに関する意見書」にもとづいて検証した上で,適正性と準拠性の定義が日本の監査実務と整合しているか否か,整合していないとすれば,その原因は何かについて考察する。