LSEの研究者Michael Powerが,監査爆発の理論を提示してからおよそ20年が経過した。
Powerは,当該理論の中で,テクノロジーとしての監査が,それを要求するプログラムと緩やかにしか結びついていないにも関わらず,多様な領域に普及しつつあることを明らかにしたのであった。Powerは,監査社会の特徴は,監査が統制システムに焦点を当てることにあり,多様な領域への監査の普及は,こうした統制システムへの注目という観点から説明可能であると主張する。
本稿は,かかるPowerの主張を,2014年より米国で開始された紛争鉱物報告書監査を俎上に載せて検討するものである。検討の結果,紛争鉱物情報にたいする監査という,新たな領域への監査の普及は,Powerの指摘の通り,統制システムへの注目という観点から説明されうることが示される。また,紛争鉱物報告書監査の事例では,プログラムとテクノロジーとしての監査の結びつきの曖昧さが観察される。