近年,上場会社において,不適切な会計処理の発覚により,過去数期分の有価証券報告書の訂正とともに訂正内部統制報告書を提出している事例が多く見受けられる。不適切な会計処理が発覚した場合には,経営者による内部統制の評価が適切であったかどうかが問題となり,また,監査人は当初の財務諸表監査および内部統制監査で表明した監査意見が適切であったかどうかが問題となる。内部統制報告制度の導入後における開示義務違反に係る告発・課徴金納付命令事案を対象として,処分対象期の内部統制の評価結果および監査人の対応について分析し,内部統制報告制度の問題点および今後の課題を提言している。本稿において明らかとなった実態は,経営者による内部統制の評価・監査人による内部統制監査の簡素化や,新規上場企業の内部統制監査の免除といった負担軽減の方向に一辺倒の制度設計に警鐘を鳴らしているように見える。