2017 年 2017 巻 27 号 p. 13-20
本稿では,コーポレート・ガバナンスと財務報告の品質との関係を考察する。本稿での考察は,株主と役員の属性がコーポレート・ガバナンスの有効性に影響を及ぼし,結果として財務報告の品質を左右するという関係を基礎とする。具体的には,まず規制当局等によって公表された資料や先行研究での議論をもとに,株主と役員に関する個別の属性(機関投資家の持ち株比率・経営者の持ち株比率・役員の独立性・役員の専門性)がコーポレート・ガバナンスの有効性に影響を及ぼすのかというロジックを簡単に検討する。そして,その関係のもとで,財務報告の品質に及ぼす影響を分析した先行研究をレビューし,全体としての傾向を要約するという形で議論を進める。本稿での考察を通じて,一般に望ましいといわれるコーポレート・ガバナンスの属性が,財務報告の品質に対して,実際にはどういった影響を有しているのかについて,平均的な傾向を捉えることができる。