2017 年 2017 巻 27 号 p. 143-154
監査意見形成過程において,監査人は監査証拠の信頼性を評価する。では,監査証拠の信頼性はいかにして評価されるのか。一般的には,入手源泉(内部証拠か外部証拠か)や,形態(文書的証拠か口頭証拠か)等が評価基準として認知されているが,収集した監査証拠の評価活動を監査人の思考に着目して考えた場合には,監査証拠の信頼性を判断するためのさらなる証拠に関する考察が必要となる。本稿では,このような証拠の証拠をメタ証拠として認識した上で,財務諸表監査のプロセス,特に現行のリスク・アプローチにおけるメタ証拠の機能について試論する。
また,Mautz and Sharafによる第3類型の証拠,すなわち合理的論証のうち帰納的論証および帰納的推論に包摂されるメタ証拠の評価が,監査人が得る保証の水準の決定要因として位置づけられることを例示し,監査証拠の信頼性評価におけるメタ証拠の作用と保証水準との関係について論じる。