2018 年 2018 巻 28 号 p. 30-36
会計監査において,ITの利用はすでに一般的となってきている。例えば,CAATを利用した仕訳テストなど,精査的な手法での利用は広く実施されているが,定型的な業務が中心である。見積りの監査へのITの活用は,貸倒・賞与引当金などの見積りの不確実性に関して,客観的な評価方法やデータが利用可能で主観性が少ない場合は実施されているが,繰延税金資産の回収可能性など主観性が強い場面におけるITの適用は,必ずしも深い利用に至っていない。
AI(人工知能)などの技術を監査においても取り込むべきであり,特に主観性が強い場面において,監査人の判断に資する情報を提供することは有用である。また,過去データ,外部データ,非財務情報の活用も有用である。さらに,監査のリアルタイム化と監査における付加価値の提供も実現可能と考える。但し,被監査会社から提供される情報の信頼性,被監査会社におけるITの活用状況,データの標準化と守秘義務の問題が課題となっている。