2019 年 2019 巻 29 号 p. 22-31
近年の会計基準における将来予測情報の拡大化は,本質的に不確実な会計上の見積り項目の増加を通じて,経営者の主観の介入度合を高めることになる。経営者の判断の結果として財務諸表本体に計上される会計上の見積値の適正性は,見積りに用いる評価モデルやインプットの多様性から一定の幅が存在する。したがって,当該見積値の不確実性の度合を理解するためには,これまで以上に補足・補完情報の開示が必要であるが,その開示場所は財務諸表外の場合も想定されるため,保証業務の対象範囲や保証水準等との関係が問題となる。この状況下での保証業務の課題は,経営者の判断の結果の後追いに留まらない監査人の職業的懐疑心の適用が挙げられるが,監査人による個別的な対応だけでは不十分である。包括的な対応として,保証業務も意識した会計基準の開発や財務報告の全体を通じた開示のあり方の検討等の保証業務の枠組み外での取り組みも併せて求められる。