2020 年 2020 巻 30 号 p. 81-88
近年監査役等を取り巻く環境が大きく変化し続けている中で,直近の最も大きな変化が監査上の主要な検討事項(KAM)の導入である。KAMの選定は監査人が行うものの,監査役等と協議した事項の中から選定されることから,監査役等は,KAMの取扱いにおいて重要な役割を果たすことが期待される。その一方で今までにない新しい制度であることから,実務における対応が注目されるところでもある。
そこで本稿では,KAMの導入について,リスク情報開示を中心に,監査役等の実務に与える影響について検討する。KAMの導入に向けた検討に際しては,KAMの記載が,監査の透明性ひいては信頼性を高めるだけでなく,企業のリスクマネジメントへの信頼性を高め,中長期的な企業価値の向上につながるものであることを,監査役等,監査人,執行側といった関係者間の共通認識とすることが重要である。