日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナにおける銅欠乏環境への適応機構を制御するマスター調節因子、SPL7の解析
*山崎 広顕小林 善親鹿内 利治
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p. 0243

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抄録
銅は全ての生物において必須な微量金属である。高等植物において銅は、光合成電子伝達、活性酸素消去、呼吸、エチレン感受等に関与する。しかし過剰な銅は生物にとって有毒であるため、銅過剰条件下で植物は厳密な銅輸送や銅タンパク質の蓄積を上昇させることにより銅過剰による害を回避している。
一方、銅欠乏条件下においては活性酸素消去に関与する銅タンパク質であるCu/Zn SOD (CSD1、CSD2: それぞれ細胞質型、葉緑体型)の発現抑制が起こる。我々はこれまでにmicroRNAのmiR398がこの調節に関与していることを証明した。miR398は銅欠乏条件下において特異的に発現しCSD1CSD2 mRNAの分解に関与する。失われた活性酸素消去機能は同じく銅欠乏時に特異的に発現するFeSODによって補われる。このように植物は銅タンパク質への銅の分配を制御することで銅欠乏環境に適応する。この他にも植物は銅欠乏時には根に局在する銅トランスポーター群の発現を上昇させる。このように高等植物は銅欠乏環境に適応するための様々な戦略を有している。
本研究において私はmiR398の転写活性化因子と推測されるSPL7を同定した。さらにSPL7は銅欠乏時にFeSOD、また銅トランスポーター群の転写も同時に上昇させたことから、複数の銅欠乏に応答する遺伝子の転写活性化因子であることが示された。これらの結果はSPL7が高等植物の銅欠乏環境への適応機構を同時に制御する重要な因子であることを示唆する。
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© 2008 日本植物生理学会
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