2022 年 2022 巻 32 号 p. 29-43
非財務情報(記述情報)の重要性が高まり,法定開示における比率も高まっているが,日本においては,事業報告及びその附属明細書が監査役等の監査報告の対象とされていることを除くと,「その他の記載内容」として公認会計士監査において通読・検討の対象となりうるにとどまっている。しかし,いくつかの欧州諸国では独立保証業務提供者(法定監査を提供する者が兼ねていることが多い)による検証の対象とされ,EUの企業持続可能性報告指令案では法定監査人等による保証の対象とすることを求めることが提案されている。日本において,非財務情報の検証を監査人に要求することを検討する際の課題(公認会計士法の下では,監査法人は非財務情報の保証を業として行うことはできないと解されるし,公認会計士も法定監査と同時提供できないという問題を含む)を検討し,また,その場合の責任がどのようなものとなるのかを考察する。