統合報告の保証業務は独占業務ではないため,保証業務の主体は公認会計士や監査法人に限定されない。これにより,ISAE3000に準拠していない保証業務が存在し,外部機関から品質が検討される機会もなく,業務報酬が開示される制度もないため,保証業務の実態がつかめない。
我が国における保証報告書の現状調査でも,手続名が列挙されている状況のため,業務内容の透明性が図られていない。
一方,我が国におけるKAMの早期適用事例では,監査プロセスの透明化が図られている事例が登場している。統合報告の保証業務においてもKAMと同様の報告がなされるならば,保証業務の利用者は統合報告の開示に関するガバナンスの状況を読み取れることがあり,また,重要な事項に実施された手続の理解も進む。その結果,統合報告の保証業務の透明化が図られると期待できる。たとえ制度で求められていなくとも,統合報告の保証報告書に「主要な検討事項」を積極的に記載する意義があると考える。
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