抄録
監査報告書の透明化に関するさまざまな議論を受けて,わが国においても,監査上の主要な検
討事項(Key Audit Matters: KAM,以下ではKAMと記述)の記載が求められるようになった。
KAMについては,記載内容のボイラープレート化が当初から懸念されているが,ボイラープレ
ート化が深刻な場合,情報利用者にとってKAMは情報内容を有さないという帰結が予想され,
政策的意図が十分に達成されないことになる。本研究で実施したRousseau and Zehms [2024]
のフレームワークに依拠した分析によって,監査事務所の意思決定スタイルよりも監査パートナ
ーの意思決定スタイルのほうがKAMの類似性に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。本
研究の結果は,わが国におけるKAM導入の事後評価の1つとなることに加えて,KAMの経済
的帰結について解明を試みる一連の研究に対して重要な示唆を与える。