抄録
フィリッピンと日本はともに豊富な鳥類相を持っていて,それぞれ556種および524種が記録されている。また両国の共通種は215種あり,そのうちの138種が渡り鳥である。現在,19種が日本からフィリッピンに渡るといわれていて,そのうちの12種はMAPS(Migratory Animal Pathological Survay移動動物の病理学研究調査)によって記録されており,残りの7種は山階鳥類研究所による標識回収によって渡りが判明している。今後,フィリッピンにおける標識放鳥数が増加することによって,両国を渡る種数が増えていくものと考えられる。
鳥類保護についてみると,フィリッピンは約87種で絶滅の恐れがあり,その大多数は固有の森林性の鳥類で,森林棲息地消失の増大によって棲息が脅かされている。日本における絶滅の恐れのある種は26種に過ぎず,その中で6種のみが固有種である。しかしながら,日本のフィリッピンの両国で記録された鳥類のなかには,11種の渡り鳥を含む14種の絶滅の恐れのある種がある。したがって,フィリッピン固有の鳥類および両国共通種である渡り鳥に対して,共同保護活動を促進していく必要がある。