行動経済学
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第13回大会プロシーディングス
心理会計バイアスと個人の金融資産残高の関係:消費に関する心理会計バイアスとセルフコミットメントの違い
末廣 徹武田 浩一神津 多可思竹村 敏彦
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2019 年 12 巻 Special_issue 号 p. S53-S56

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抄録

本稿では,広義の心理会計のバイアスである2つの心理会計バイアスと個人の金融資産残高の関係を分析した.具体的には,2つの異なる心理会計のバイアスである消費の心理会計とセルフコミットメントの特徴をまとめ,インターネットアンケート調査の結果に構造方程式モデリング(SEM)を用いることでこれらのバイアスと個人の金融資産残高の関係を分析した.消費の心理会計とセルフコミットメントはいずれも広義の心理会計のバイアスであるものの,既存の研究では消費の心理会計によって個人は最適な消費を行うことができずに金融資産の形成にマイナスの影響がある可能性がある一方,資産形成時の心理会計バイアスであるセルフコミットメントは消費を軽減・抑制する効果があるために金融資産の形成にプラスの影響があるという,相反する効果がそれぞれ独立に示されてきた.本稿ではSEMを用いてこれら2つのバイアスと金融資産残高の関係を同時に推計し,両者の大小関係を比較した.両者が金融資産残高に与える影響の大きさを比較すると,消費の心理会計によるマイナスの相関よりもセルフコミットメントによるプラスの相関の方が若干大きいものの,両者の絶対値に大きな差はないことが分かった.

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