2020 年 13 巻 p. 29
本研究は,投資家に対する教育が投資家の行動バイアスに与える因果効果を,ランダム化比較試験(RCT)の手法で実証的に検討するものである.既存研究においては,IQや認知反射能力,あるいはEQといった先天的な資質が投資家の投資行動の決定要因として注目されてきた.しかし投資行動の後天的な変化については十分に検証されていない.そこで本研究では,投資家の行動バイアスの一種である「損失先送り効果」(Disposition Effect)を分析の対象として,「教育」が投資行動に与える影響を推定する.分析の特徴としては,模擬市場を用いる点に加え,「投資家の異質性に応じて教育の処置効果が異なる」可能性を明示的に取り扱った推定を行っている点が挙げられる.実験の結果,第一に,投資家の属性を考慮しない平均的な教育の処置効果は認められなかった.第二に,投資家個人の属性を条件付けした推定から,認知反射能力が高い場合,または数学能力が高い場合において,教育による行動バイアスの是正がより強く観察された.以上の結果は,個人属性に応じて,投資行動に与える教育の因果効果が変化することを示唆している.