行動経済学
Online ISSN : 2185-3568
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論文
量子情報理論による無形財を中心とした行動経済学的概念の再定式化の提案―顧客体験の数理設計の実現可能性―
福田 操
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2022 年 15 巻 p. 10-21

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抄録

この研究の目的は,量子コンピュータなどの基盤理論である量子情報理論の構成原理である観測理論の観点から,経済モデルの構築が可能かどうかを探求することである.そこで,顧客の評価に主観性が入り込むことに起因する不確定性が課題となっている,無形財に対する顧客満足度の数値化に関するモデルを提案した.この経済モデルから求めたエントロピーより,非線形非対称な価値関数が導出された.そして,これを包含する一般的な価値関数である主観的幸福度の価値関数は,顧客の無形財の体験をヒルベルト空間上の回転として扱うことで,位相の干渉により古典的確率論では記述できない独立性公理の破れが起こることがわかり,行動経済学の結果に当てはめて説明することができた.これにより,無形財の体験に対する主観的な評価の構造について新たな知見が得られ,量子情報理論に基づく経済モデルの構築可能性と顧客体験の数理設計の実現可能性が高まった.

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© 2022 行動経済学会
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