本稿では,60代6486人のオンライン調査結果をもとに,退職後生活の満足度に対する資産水準の影響を重回帰分析などで分析した.生活全般の満足度を目的変数に,健康状態,仕事・やりがい,人間関係,資産水準の各満足度や世帯保有資産,世帯年収,家族構成など14項目を説明変数とした.分析の結果,世帯年収と世帯保有資産はともに有意に生活全般の満足度に影響を与えており,退職世代の60代において世帯年収より世帯保有資産の影響の有意性が高いとする証左はみつからなかった.ただセグメント毎に分析・比較すると退職者,年金未受給者,保有資産2000万円以下層において,世帯保有資産の影響が有意に表われた.