近年,マーケティング・リサーチでは広告動画の感想を問う自由回答形式質問が増えているが,意味をなさない文字列等の「不真面目回答」の出現が課題となっている.本研究では,インターネット調査上でランダム化比較試験を行い(n=10,324),①コミットメント②損失を強調したメッセージ③利得を強調したメッセージという行動経済学的施策(ナッジ)が不真面目回答に与える効果を評価した.結果として,①②③の施策全てが不真面目回答者数と回答数の両方を減らし,さらに,②③は不真面目回答者が選択する傾向のある中間選択も減少させた.これらの施策からは回答中断者や回答負荷を増やすといった負の影響は確認されず,むしろ③利得強調のメッセージからは回答中断者や回答負荷を減らす効果が観察された.以上より,行動経済学的施策(ナッジ)によって,調査での不真面目回答の存在による回答回収の非効率性を低減させられる可能性が示唆された.