行動経済学
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論文
電力の品質と価格に対する家庭部門の選好
—停電へのWTPとWTAの分析から—
宮田 史子
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2010 年 3 巻 p. 39-49

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抄録
我が国では,2000年より電気事業に小売自由化が導入された.それに伴い,電力価格は大幅に低下した.その結果,これ以上価格を低下させるには,ある程度の品質低下は止むを得ない状況になっている.そこで,本論では,今後の制度設計の方向性を検討するために,電力の品質と価格に対する家庭部門の選好を,停電が解消する場合の支払意思額 (WTP;Willingness to Pay) と,価格低下の代わりに停電の増加を受け入れる受入補償額 (WTA;Willingness to Accept) を用い,プロスペクト理論 (Prospect Theory) に基づいて分析した.
分析結果にて,我が国の家庭部門には,近年の価格水準であれば,価格低下より品質維持を優先する選好があることを確認した.それは,家庭の意思決定が,停電がほとんど発生しない状況を参照点 (Reference Point) とし,現状の高い供給品質に対する賦存効果 (Endowment Effect) あるいは現状維持バイアス (Status Quo Bias) が存在する中でなされているため,と解釈された.以上から,今後の電気事業制度改革については,我が国の高品質供給の維持を前提として検討することが望ましいと考える.
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© 2010 行動経済学会
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