株式市場においては,大きなイベントが発生し市場全体が急落したとき,その後上昇する場合がある.多くの実証分析によりオーバーリアクション仮説が唱えられているものの,シミュレーションや理論モデルの研究はほとんどなく未解決問題である.本研究では,東証株価指数(TOPIX)配当込みのデータを用いて大幅な急落時に反発が多いことを実証的に示し,先行研究であるシミュレーション研究の結果と整合的な理論モデルの構築を行った.その結果,急落時に多くのファンダメンタルな投資家が考えている適正株価よりもさらに下落し,その後適正だと考えている株価に戻っていくことが示され,必ずしもオーバーリアクション仮説が必要ではないことが分かった.さらに,ファンダメンタル投資家しか存在しないと仮定しても,効率的市場仮説では説明できない,ボラティリティクラスタリングなどの実証現象を説明できる可能性があることを示した.本研究では,シミュレーション,実証分析とも整合的な理論モデルの一例を構築し,実証分析,理論モデル,シミュレーションを比較検討しつなぎ合わせることが出来たことも本研究の成果であると考えている.