行動経済学
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第6回大会プロシーディングス
ナイーブさによる自己破産
小島 健
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2012 年 5 巻 p. 260-263

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抄録

本稿はOjima (2012)に従い,双曲的な時間割引因子を持つ複数の異質な家計—ナイーフとソフィスティケイト-が存在する世代重複モデルを提示する.このモデルではナイーフの資産収益率に対する楽観による破産が存在する.ナイーフは将来の貯蓄率を過大に評価し,したがって将来の資産価格を過大に予想する.それに対し,ソフィスティケイトは将来資産価格を完全に予測し,ナイーフの過大予測も織り込んで行動する.ソフィスティケイトはナイーフへ資産の収益率よりも高い金利で貸し,ナイーフは借り入れによって資産を購入する.この取引はソフィスティケイトへ超過利潤を,ナイーフへそれに見合った損失をもたらす.その結果,ナイーフは破産する場合が存在し,更に以下の場合により高くなる.(i)現在バイアスの程度が高くなる場合,(ii)ソフィスティケイトの人口がナイーフの人口よりも相対的に多くなる場合,(iii)長期の割引率が低くなる場合である.

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© 2012 行動経済学会
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