抄録
意思決定理論の分野では,感情はリスク選好のプロセスに影響を及ぼすことが指摘されている.Shafir (1993)やShafir–Simonson–Tversky (1993) は,効用最大化モデルの代替理論として「理由に基づく選択(Reason-based Choice)」仮説を提唱した.この「理由に基づく選択」をてがかりにリスク選好のプロセスについて議論を展開してみたい.本稿では,帰結のリスク志向行動は,受動的リスク志向へ向かうルートと能動的リスク志向へ向かうルートに違いがあると仮定する.ここで問題となるのがリスク志向行動は,表面的には受動的か能動的か区別がつかないことである.そこで,脳科学的手法を用いたニューロエコノミクス実験を行った.機器は,前頭皮質部分の血流量変化を計測できるfNIRSを用いた.実験データの分析結果から,その差は統計的に有意であった.