日本看護技術学会誌
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原著
多次元評価指標による綿タオルと化繊タオルの部分清拭効果の比較
松村 千鶴深井 喜代子
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2014 年 13 巻 3 号 p. 188-199

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抄録
 本研究の目的は,綿タオルと化繊タオルの素材の違いが清拭効果に及ぼす影響を比較することである.健康女性16名を対象に,タオルの種類を変え,異なる日に同じ方法で背部と四肢の部分清拭を実施した.タオル素材には綿タオルと化繊タオルを用い,大きさを47×17㎝に揃え,素材には200mLの同量の水分を含ませた.タオルはすべて恒温器で加温し,55.0±0.2℃に保った.清拭効果の評価には皮膚温,深部温,血圧,心拍 (HR),POMS短縮版,覚醒度とリラックス度 (VAS),素材の肌触りのリッカートスケールの多次元指標を用いた.その結果,どちらの素材を用いた場合も清拭実施中には,一時的な心拍数の減少,清拭終了後にはPOMSの評点の減少,覚醒度の低下,リラックス度の増大が,それぞれ有意に認められた (P <0.05).自律神経活性は清拭によって著明に変化しなかったが,綿タオルによる清拭実施中にのみ交感神経活性 (LF/HF) が有意に低下していた (P <0.05).両素材ともに清拭開始後から前胸部,前腕の皮膚温,そして深部温が暫時上昇した (P <0.05).化繊タオルでは,さらに末梢部 (前腕,右手指先) の皮膚温も上昇した (P <0.05).一方,清拭終了後の肌触り感は,化繊タオルのほうがより適度な柔らかさと評価されていた (P <0.05).以上のことから,化繊タオルと綿タオルは部分清拭ではほぼ同等の良好な清拭効果を示すものの,保温性と肌触り感では化繊タオルのほうが優れていることが分かった.
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© 2014 日本看護技術学会
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