2001 年 52 巻 1 号 p. 28-32
嗄声と甲状軟骨の石灰化腫瘤をきたした74歳の男性症例を報告した。既往歴としてラジウム針を喉頭に埋没させるHarmer法による喉頭癌治療が30年前にあった。1999年夏より嗄声を訴え,耳鼻科を受診した。喉頭鏡下に左声帯前半部に腫瘤を認め,CT検査でも甲状軟骨に高濃度陰影の腫瘤が明らかとなった。放射線誘発の悪性腫瘍も考慮して前頸部切開による生検を施行したが,石灰化や線維化を伴う壊死組織像であり,悪性所見や炎症細胞は認めなかった。30年前に施行されたラジウム針による喉頭癌治療により甲状軟骨に限局的な壊死が生じたものと考えた。