日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
特集3 シンポジウム3:進行甲状腺癌の取り扱い
甲状腺分化癌高危険群の検討
長谷川 泰久松浦 秀博
著者情報
ジャーナル 認証あり

2001 年 52 巻 2 号 p. 127-132

詳細
抄録

甲状腺分化癌の病態が解明されてくるに従い,全体としては予後のよい分化癌もいくつかの因子により癌死リスクの低い群と高い群に大別できることが明らかになった。予後因子が明らかになることにより,いくつかの臨床的対応が生まれる。予後の予測とカウンセリング,予後因子に対応した治療,特に手術療法と術後の治療計画である。ここでは甲状腺分化癌の予後因子から癌死高危険群を明らかにし,その臨床的意義について検討を加えた。
対象は1980年から1990年の間に愛知県がんセンター頭頸部外科において手術を施行した甲状腺分化癌135例である。予後因子の解析はCoxの比例ハザードモデルにて行った。単変量による解析では性,年齢,TNM分類,被膜外浸潤,分化度が有意な予後因子であった。多変量による解析では性,年齢,被膜外浸潤が有意な独立した予後因子であった。また,臨床的リンパ節転移もリスク比の高い予後因子であった。特に,被膜外浸潤が最も重みのある因子であり,55歳以上でかつ被膜外浸潤の症例を高危険群として位置付けることができる。

著者関連情報
© 2001 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top