日本気管食道科学会会報
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特集3 シンポジウム3:進行甲状腺癌の取り扱い
局所浸潤例について
中尾 量保
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2001 年 52 巻 2 号 p. 133-136

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抄録

甲状腺分化癌に関してはほとんどの場合,その生物学的悪性度が低いため局所浸潤進行癌に対する手術治療,すなわち甲状腺および浸潤臓器合併切除はQOLやsurvivalにとって有用であると考えられている。われわれもまたこの考えのもとに過去20年間に甲状腺癌の気管,食道,血管等への浸潤のため臓器合併切除を48例に行った。気管環状切除・端々吻合が最も多く39例で,気管切除の最長は11軟骨輪であった。喉頭全摘を6例に行い,再発2例において喉頭半切後耳介軟骨で再建し,QOLに寄与したと考えられた。これら39例の10年生存率は67.7%でsurvivalも良好であった。食道内腔にまで浸潤の及んだ3症例に対しては,1例には前腕皮弁を用いて再建し,2例には空腸間置移植を行い,いずれもマイクロサージェリーによる血管吻合を行った。また総頸動脈へ浸潤した2例に対しては人工血管による置換を行った。
QOLからみて最も問題になるのは両側反回神経麻痺であり,12例に発症し9例で一側の麻痺は回復したものの12例中11例で嗄声が残存した。以上,甲状腺癌の臓器浸潤例に対し,局所根治を得た合併切除はQOLやsurvivalからみて有用と思われた。

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