日本気管食道科学会会報
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特集3 シンポジウム3:進行甲状腺癌の取り扱い
未分化癌について
平川 勝洋夜陣 紘治立川 隆治
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2001 年 52 巻 2 号 p. 149-153

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抄録

甲状腺未分化癌は,ときに数週間で死の転帰をとることもあり,癌のなかでも極めて予後不良なものである。われわれの施設では1990年から1999年までの10年間に治療した甲状腺癌100例中8例が未分化癌であった。8例中5例に根治目的で手術を行った。2年以上生存例は,吸引細胞診で未分化癌と診断し,化学療法後に咽喉頭食道摘出術を行った1例のみで,他の7例は治療開始1~8カ月後に死亡した。生存例は術後の病理学的検索では大部分が乳頭癌で,未分化転化癌であったと考えられた。本疾患の治療法については議論の多いところであるが,白金製剤や副作用軽減のためのG-CSFの登場,多剤併用療法の開発により,化学療法による治療成績の向上もみられている。また拡大手術の併用により化学・放射線治療のみよりも良い成績の報告も増加してきている。手術治療を考慮する場合は,完全切除がなされなかった場合,進行を助長する可能性もあり,慎重であるべきであるが,未分化転化癌のなかには治癒切除可能な症例があり,完全治癒させ得る可能性が示唆されている。残念ながら,系統的な治療法を確立するには至っていないのが現状であるが,個々の症例で慎重に根治を目指す一方で,常に患者のQOLを考慮した治療法の選択が重要である。

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