抄録
両側声帯の正中固定によって生じる呼吸困難に対する声門開大術には多くの方法があるが,1984年Ejnellらによって報告された方法は,喉頭の正常構造を破壊しない,手技が比較的簡便であるなどの利点があり,本邦においても1990年以降行われるようになってきた。本法は,手技は比較的容易ではあるが,実際に甲状軟骨に刺入する針の位置や披裂軟骨直前に廻した糸の牽引方向などに関する詳細な報告がなく,症例に応じて行っているのが現状と思われる。そこで,摘出喉頭を用い,刺入する針の位置や牽引する糸の方向と,声門の開大度の関連につき検討した。
甲状軟骨翼に垂直に牽引した際の声門面積は,牽引前に比較して106.2%であり,声門正中線に対して垂直に牽引した際の声門面積は牽引前の112.7%であり,声門正中線に対して垂直に牽引したほうが,約6%程度大きな声門面積が得られた(p<0.05, paired t-検定)。
以上の結果から,声門正中線に垂直に声帯を外側に牽引する方法によって,十分な声門開大が得られると同時に,牽引する糸を誘導する針の刺入部位を術前のCT像から算出することができ,透見できない喉頭内腔へ針を刺入するジレンマが解決できると思われた。