抄録
近年,乳幼児の気道管理は気管内挿管が主流であるが中には気管切開を要する症例も少なからず存在し,この際の問題のひとつとして肉芽形成があげられている。よって今回われわれは1988年から2000年まで当科で気管切開を実施した8例と他院にて気管切開が施行された4例の計12例において小児気管切開例の術式と遅発性術後合併症のひとつである気管孔周囲および気管内肉芽形成について検討した。気管切開実施年齢は6カ月から16歳であった。当科で実施した8例の皮膚切開は全例縦切開で,気管壁の切開は原則として超低体重児とカニューレ抜去が可能と思われる5例には縦切開を行い,長期間の気道管理が必要な3例には逆U字切開を行った。気管切開の高さは輪状軟骨,第1気管輪の切開は避けたほうがよいが,将来的に気管再建術も想定しあまり低位での気管切開は避け,第2,第3気管輪の高さで施行すべきと考える。
気管孔周囲および気管内肉芽の発生については,12例中9例に肉芽の発生をみ,さらにこの9例中7例に気管孔付近よりMRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)を検出したことよりMRSA感染は肉芽形成の増悪因子のひとつと考えられた。