抄録
甲状腺分化癌再発症例16例につき,その手術術式,転移部位,術後合併症などにつき検討を行った。再発部位の内訳は,残存甲状腺からの再発例が4例,頸部リンパ節再発例が12例であり,このうち2例は初回治療と反対側からの再発であった。残存甲状腺再発症例に対しては,全例で甲状腺全摘を行い,術前V,VI群にリンパ節腫脹を認めた1例では保存的頸部郭清を併施した。頸部リンパ節再発症例に対しては,6例に対しては保存的頸部郭清(V-VII)を,2例にsupraomohyoid neck dessectionを,3例に対してはlateral neck dessectionを,IV群のリンパ節転移が第1気管輪への浸潤を認めた1例には,第1気管輪切除,気管傍郭清(I-IV)を行った。一次手術と反対側のリンパ節に再発した症例に対しては,残存甲状腺が存在した場合には,甲状腺全摘術も併施した。平均観察期間は65.3カ月と短いものの,全症例とも二次手術の後に再々発はなく,2002年5月現在無病生存中である。術後の合併症に関しては,反回神経麻痺などの重篤な合併症を生じた症例は存在しなかったが,保存的頸部郭清術を行った5例においては胸鎖乳突筋を全例切除しているため,この欠損による頸部の変形は避けられなかった。以上の結果から,残存甲状腺再発症例に対しては,甲状腺全摘および気管傍郭清を,頸部リンパ節再発にはVII群下方に明らかなリンパ節腫大を認めなければ必ずしも保存的頸部郭清は必要ではなくlateral N.D.を行うべきかと考えた。