日本気管食道科学会会報
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54 巻, 1 号
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原著
  • 大前 由紀雄, 杉浦 むつみ, 茂木立 学
    2003 年 54 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    健常な85歳以上の超高齢者6名を対象に,1 ml・5 ml・10 ml嚥下時の咽頭食道造影検査を実施し加齢に伴う生理的な嚥下機能の変化を検討した。なお,咽喉頭異常感と診断した60歳未満の健常者6名をコントロール群とした。嚥下動態の解析には,(1)咽頭流入・喉頭流入・誤嚥の有無,(2)各嚥下運動の時間的関係,(3)嚥下運動の出力量の変化,を実施し比較検討した。
    超高齢者群では,嚥下量の増加に伴い咽頭流入・喉頭流入が高頻度に観察された。最大喉頭挙上距離は超高齢者群で有意に延長したが,舌運動による随意的な食塊移送を嚥下運動の開始と定義して咽頭位の変化をみると,超高齢者群では,安静時の喉頭位が嚥下運動開始時までに有意に上昇し,嚥下運動開始時を基準とした喉頭移動距離はコントロール群と有意差を認めなかった。また,造影剤の下咽頭流入時の喉頭挙上度は,超高齢者群で有意に低値であった。一方,嚥下量の増加に伴う喉頭前方移動距離および食道入口部開大長は,コントロール群で有意な増大を認めたが,超高齢者群で有意な変化を認めなかった。
    咽頭期嚥下の出力パターンは加齢に伴っても影響を受けないが,咽頭期嚥下の惹起遅延ならびに嚥下量の変化に対応する喉頭前方移動や,食道入口部開大の対応能の低下を認めた。こうした変化が,高齢者の潜在的な誤嚥のリスクや嚥下障害の発症に関連すると結論した。
  • 中村 一博
    2003 年 54 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    胃食道逆流症(gastro esophageal reflux disease: GERD)に伴う咽頭喉頭疾患は咽喉頭酸逆流症(laryngo pharyngeal reflux disease: LPRD)と呼ばれている。今回われわれは,臨床的にLPRDと診断された症例に対し24時間pHモニタリングを施行し,頸部食道までの酸逆流を直接証明し,さらに下咽頭粘膜生検にて病理学的診断を施行し,両者の関係について検討を行った。その結果について報告する。
    症例は2001年9月から2002年9月までに東京医科大学八王子医療センターを受診しLPRDが疑われた症例のうち,24時間pHモニタリングと下咽頭粘膜生検を施行した15症例である。男性が10例,女性が5例,平均年齢は57.4歳であった。24時間pHモニタリングは外来にて施行した。pHモニター挿入時に下咽頭粘膜生検を施行した。
    pHモニタリングの結果はAmsterdam法で解析した。15例中13例に頸部食道までの逆流を認めた。病理組織所見では15例中14例に炎症所見を認めた。
    LPRD症例でpHモニタリングにて逆流が証明された症例においては,病理組織学的にも高頻度に炎症所見を認めることがわかった。
  • 服部 知洋, 馬島 徹, 堀江 孝至
    2003 年 54 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    近年,気管支喘息の治療薬であるdisodium cromoglycate (DSCG)は,Andersonらにより抗アレルギー作用のみでなくClチャンネルブロッカーとしての作用も報告され,喘息病態において気道上皮イオントランスポートの関与が示唆されている。今回われわれは卵白アルブミン (ovalbumin, OA)感作モルモットの気管を用いて,β刺激薬の硫酸テルブタリンのイオントランスポートへの影響についてvoltage clamp法を用いて検討した。indomethacin (IND)前処置後硫酸テルブタリン (1×10-5∼1×10-2 M) を粘膜側に投与した。ΔIsc (short circuit current)は1×10-2 Mにおいて感作群,非感作群ともに増加傾向がみられた。硫酸テルブタリン (3×10-3 M)の粘膜側投与において,ΔIscはClチャンネルブロッカーであるDPC前処置で両群とも有意に抑制された。感作群,非感作群ともにcyclic-AMP dependent Clチャンネルの活性亢進が考えられたが,明らかな相異を認めなかった。
  • 高木 啓吾, 町田 啓一, 加藤 信秀, 笹本 修一, 島谷 慎二, 秦 美暢
    2003 年 54 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    〈目的〉各種気管病変による気管壁の異常所見は,通常のCT検査および内視鏡検査で確認するのにとどまってきた。通常のCT検査に呼吸運動を加えたdynamic CT検査が,気管病変の診断に新たな情報をもたらすか否かを検討した。
    〈対象および方法〉dynamic CT検査は,通常の胸部CT画像から壁運動が最も異常を示すと思われる部位で深呼吸時に,1秒スキャン1秒インターバルでデータ収集を行った。連続的に作成した画像をシネモードにして気管壁の動きを観察した。対象は2000年8月~2002年4月の間に検査された気管病変9例で,その内訳は,年齢28~86歳,男女比5:4で,A群:気管壁伸展例2例(気管憩室1例,皮膚弁による気管壁欠損部補填1例),B群:腫瘍あるいは損傷による気管狭窄例7例(悪性腫瘍による気管狭窄4例,気管損傷3例)の2群に分類して検討した。
    〈結果〉dynamic CT検査は気管壁を動的にとらえることができた。気管壁が軟弱となっている気管憩室と皮膚弁による気管形成術後の2例では,吸気終末あるいは呼気終末時に続く最後の怒責によって気道内圧が上昇したときに,軟弱部が外側に膨隆することにより著明な気道腔開大が認められた。一方,腫瘍性狭窄例では全例で呼気時の狭窄が著明となり,腫瘍浸潤のために気管壁の動きが不良となった範囲とその程度を明示することができた。
    〈結論〉気管におけるdynamic CT検査は,病変の範囲および進行状況を把握するのに有用であり,さらに治療法を検討する上での一助になると思われた。
  • 再手術術式を中心に
    石田 良治, 山田 弘之, 西井 真一郎, 徳力 俊治
    2003 年 54 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    甲状腺分化癌再発症例16例につき,その手術術式,転移部位,術後合併症などにつき検討を行った。再発部位の内訳は,残存甲状腺からの再発例が4例,頸部リンパ節再発例が12例であり,このうち2例は初回治療と反対側からの再発であった。残存甲状腺再発症例に対しては,全例で甲状腺全摘を行い,術前V,VI群にリンパ節腫脹を認めた1例では保存的頸部郭清を併施した。頸部リンパ節再発症例に対しては,6例に対しては保存的頸部郭清(V-VII)を,2例にsupraomohyoid neck dessectionを,3例に対してはlateral neck dessectionを,IV群のリンパ節転移が第1気管輪への浸潤を認めた1例には,第1気管輪切除,気管傍郭清(I-IV)を行った。一次手術と反対側のリンパ節に再発した症例に対しては,残存甲状腺が存在した場合には,甲状腺全摘術も併施した。平均観察期間は65.3カ月と短いものの,全症例とも二次手術の後に再々発はなく,2002年5月現在無病生存中である。術後の合併症に関しては,反回神経麻痺などの重篤な合併症を生じた症例は存在しなかったが,保存的頸部郭清術を行った5例においては胸鎖乳突筋を全例切除しているため,この欠損による頸部の変形は避けられなかった。以上の結果から,残存甲状腺再発症例に対しては,甲状腺全摘および気管傍郭清を,頸部リンパ節再発にはVII群下方に明らかなリンパ節腫大を認めなければ必ずしも保存的頸部郭清は必要ではなくlateral N.D.を行うべきかと考えた。
  • 浅川 剛志, 吉田 晋也, 吉川 琢磨, 岸田 覚
    2003 年 54 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    当科で頸部リンパ節生検を施行した症例につき臨床的検討を行った。症例は92例(男性46例,女性46例)であった。病理診断では良性が31例,悪性が51例で,悪性腫瘍の既往があった18例中17例がリンパ節転移であった。CTで造影効果を認めた15例中11例が悪性であった。ガリウムシンチの悪性に対する敏感度,特異度はおのおの91.4%と37.5%で,悪性を疑う上で有効と考えた。穿刺吸引細胞診ではmalignant lymphomaとlymphoepithelial carcinoma 8例中5例がclass I, IIであったが,ガリウムシンチの併用で診断率の向上が期待できた。
    以上より頸部リンパ節生検の適応として,(1)高齢者で長期間リンパ節腫脹が認められる場合,(2)悪性疾患の既往がある場合,(3)CTで造影効果を認めガリウムシンチで集積がある場合,(4)FNAでclass I, IIでもガリウムシンチ上集積を認め,悪性リンパ腫等を否定できない場合があげられた。臨床経過で亜急性壊死性リンパ節炎が疑われる場合は経過観察が可能だが,悪性リンパ腫との鑑別が難しい場合やステロイドホルモン剤の投与が必要な時には投与前に生検すべきと考えた。
症例報告
  • 愛野 威一郎, 三枝 英人, 新美 成二, 八木 聰明
    2003 年 54 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    経鼻経管栄養法は,比較的簡単に,また手軽に行うことができるので医療現場において広く普及している。しかし最近,逆に経鼻経管栄養法を安易に行うことによる副作用が指摘されるようになった。今回われわれは,経鼻経管栄養チューブの長期間留置が原因と考えられた声門を狭窄する著しい披裂部粘膜の腫脹を呈した症例を経験した。症例は53歳女性。左側椎骨動脈-後下小脳動脈分岐部の動脈瘤に対しクリッピング術および気管切開術が施行された。術後,手術に起因すると考えられる重度の誤嚥を呈したため,経鼻経管栄養が行われた。さらにその後,術後の髄液漏から感染を起こし,重度の細菌性髄膜炎を併発し,意識障害に至ったため,都合約3カ月間気管切開の上,経鼻経管栄養が行われていた。その間経鼻経管栄養チューブは,強度の鼻中隔弯曲のため左側鼻孔を介してのみ挿入されており,またその交換も3週間に1回行う程度であった。その後全身状態が改善し,また誤嚥も消失したので,経口摂取を開始した。さらに気管孔の閉鎖を試みたところ,吸気性喘鳴と呼吸困難を訴えた。喉頭ファイバースコープ所見では左側鼻孔から左側梨状陥凹へ挿入された経鼻経管栄養チューブが接触していた部分の披裂部粘膜の著しい腫脹を認め,さらにこれが吸気時に声門に引き込まれ,声門を狭窄していた。そこで経管栄養チューブを抜去し,約3週間経過を観察したが改善が認められなかったため,喉頭直達鏡下に,左側披裂部粘膜の腫脹部分をレーザーにて切除した。術後は吸気性喘鳴,呼吸苦とともに消失し,気管孔も閉鎖できた。
  • 石井 甲介, 熊田 政信, 植木 彰, 阿部 弘一, 椿 恵樹, 山本 昌範, 太田 康, 廣瀬 肇
    2003 年 54 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは,パーキンソン病を基礎疾患に持ち,覚醒時に声帯の運動に障害を生じ,その結果呼気時の不随意性発声を生じた極めて興味深い症例を経験したので報告した。
    症例は60歳の女性で,1999年8月より当院神経内科にてパーキンソン病の通院加療を行っていた。2001年9月頃より日中ウンウン唸るようになり,唸っているときは食事もうまくとれなくなった。睡眠時の喘鳴はほとんどなかった。喉頭ファイバースコピー所見では両側声帯ともに開大不全がみられたが,吸気時には喘鳴を起こすほどの狭さではなく,呼気時には声帯が内転し発声が生じていた。筋電図所見では,甲状披裂筋,外側輪状披裂筋の両筋ともに活動の亢進があり,吸気時に,より活動が強いという奇異性の活動がみられた。また,L-Dopaを減量すると身体の運動性は低下するが,同時に不随意性発声は消失し,再びL-Dopaを増量すると,身体の動きは改善するが,不随意性発声が生じてくるという現象がみられた。
    本症例では,声帯内転筋支配神経が除神経過敏に陥り,L-Dopaに対する治療閾値が低下したため,通常の投与量にて声帯内転筋の過緊張をもたらし不随意性発声を生じせしめたことが推察された。
  • 奥野 敬一郎, 渡瀬 文貴, 野口 和広, 徳丸 岳志, 渡辺 尚彦, 調所 廣之
    2003 年 54 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2003年
    公開日: 2007/09/25
    ジャーナル 認証あり
    下咽頭梨状窩瘻は頸部の反復性感染で発症することが多い。今回,手術的加療の既往があり,再発した下咽頭梨状窩瘻の2症例を経験したので報告する。
    2症例とも食道造影にて下咽頭梨状窩瘻を確認し,全身麻酔下に下咽頭梨状窩瘻孔摘出手術をした。術前日,色素を内服し,手術は頸部外切開と食道直達鏡による2つのアプローチで瘻孔摘出し,術後5日間絶飲食とした。術後食道透視において,瘻孔は閉鎖しており,現在まで再発は認めていない。
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