日本気管食道科学会会報
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症例報告
診断に苦慮した高齢発症の重症筋無力症による嚥下障害の1例
小町 太郎三枝 英人愛野 威一郎松岡 智治粉川 隆行中村 毅
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2005 年 56 巻 3 号 p. 286-291

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抄録

われわれは, 高齢発症の重症筋無力症 (以下MG) による嚥下障害および構音障害を呈した1例を経験した。
症例は79歳女性。転倒後から嚥下障害が出現し, 一時改善を繰り返しつつ悪化した。この患者ではMGに典型的な日内変動や易疲労性を認めず, また, 眼瞼下垂などの典型的症状も有していなかった。このため, 診断に苦慮した。しかし, 訓練開始直後は訓練に対する反応性がよいが, その後徐々に悪くなること, 午前中より午後に嚥下訓練に対する反応性が悪いことから, MGが疑われた。そこで, 抗AChR抗体を測定したところ陽性であり, エドロフォニウム2 mg投与後に上記症状は速やかに改善したため, MGと診断できた。
最近, 高齢発症の重症筋無力症の存在が注目されており, 注意が必要と考えられた。

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