2006 年 57 巻 3 号 p. 257-261
甲状軟骨形成術I型は声門閉鎖不全に対する手術的治療として確立したものであるが,甲状軟骨開窓部への挿入材料にはさまざまな素材が選択されてきた。当科では当初シリコンブロックを用いていたが,医療材料としての認可等の問題点を考え,ゴアテックス®シートに切り替えた。そこで,2種の挿入材料の差異による音声機能検査成績を比較検討した。術前の成績と術後の成績にはシリコン群とゴアテックス®群間で有意差はなかった。呼気流率と声の強さは両群で手術により有意に改善し,最長発声持続時間(MPT)はシリコン群で有意に改善していた。手術前後の検査値の差異を「改善度」とし,両群で比較したところ,MPTのみシリコン群がゴアテックス®群より有意に改善していた。以上,音声機能検査成績はシリコン群が若干良好であったが,社会的にも今後は医療材料として認可のあるゴアテックス®の使用が望ましい。挿入材料にゴアテックス®を用いて,より音声機能検査成績を良好に改善させる手術手技の開発が重要である。