日本気管食道科学会会報
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症例報告
小児における胃食道逆流による急性喉頭狭窄症例について
三枝 英人中村 毅愛野 威一郎松岡 智治小町 太郎粉川 隆行
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2006 年 57 巻 3 号 p. 288-297

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抄録

近年,今まで健常と思われていた小児においても胃食道逆流によってさまざまな咽喉頭病変の発症することが明らかになってきた。このうち,喉頭痙攣と声門上狭窄は急速進行性で,生命の危機に繋がるため重要である。しかし,その診断·治療の指針は未だ明らかではない。
 今回われわれは胃食道逆流により急性喉頭狭窄を発症した小児4例を経験した。症例1は,8カ月女児で固形物を摂取後に喉頭痙攣を呈するようになった。症例2は12カ月男児で喉頭痙攣とともに中枢性無呼吸を合併した。症例3は7歳女児で喉頭痙攣と無呼吸,体重減少を伴った。症例4は5歳男児で窒息寸前に至るほどの声門上狭窄を反復した。ゲップや吃逆,唾液の反復嚥下,乾性咳嗽などのGERD関連症状と,生活·食習慣について両親に詳しく問診を行ったところ,全例で何らかの症状や問題点のあることが確認された。喉頭内視鏡検査では全例で披裂部-披裂間部を中心とした粘膜の発赤·腫脹を認めた。頸部側面X線検査では全例で頸部食道壁の腫脹が確認された。VTR上部消化管造影検査では喉頭痙攣の3例で食道蠕動の低下,声門上狭窄例で高度の胃下垂,胃排泄能の低下のあることが指摘された。以上のことから,GERD関連症状の有無と生活·食習慣の問題点について両親に詳細な問診を行い,声門後部を中心とした咽喉頭所見,頸部側面X線による頸部食道壁の腫脹の有無を確認することが,急性喉頭狭窄を呈する小児の胃食道逆流例についての,簡便で,かつ有用な診断方法であると考えられた。加えて,VTR上部消化管造影検査は食道蠕動や胃排泄能などの上部消化管機能異常を検出する上で有用な検査法であると思われた。
 治療については,小児の成長,成熟を考慮すると,酸分泌抑制剤を中心としたGERDの薬物療法とともに,生活·食習慣に対する指導を行うことが重要であると考えられた。

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