日本気管食道科学会会報
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症例
披裂部余剰粘膜により呼吸困難をきたした小児の2症例
加藤 央木村 美和子熊谷 譲田山 二朗
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2009 年 60 巻 1 号 p. 41-46

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抄録

今回われわれは,乳児期の気管挿管後に緩徐な経過で呼吸困難をきたした2症例を経験し,それは声門狭窄あるいは声門上狭窄が原因となって形成された披裂部の余剰粘膜によると判断し,余剰粘膜を切除して改善を認めたので,これを報告する。
症例1は14歳女児で,出生時よりの呼吸困難のために気管挿管され,Wilson-Mikity症候群と診断された。3歳時に抜管したが両側声帯可動制限のために呼吸困難は継続,以後増悪していった。
症例2は13歳女児で,生後6カ月に先天性心疾患の根治術を受け,術翌日に心肺停止となり,20日間気管挿管された。抜管後も呼吸困難を認め,以後増悪していった。
披裂部の余剰粘膜が気道狭窄の要因の一つと判断し,気管切開後,喉頭微細手術下に余剰粘膜をYAGレーザーにより切除した。呼吸困難が改善し,2症例とも気管切開孔を閉鎖した。
2症例とも前医での初回挿管時は喉頭の器質的異常は指摘されず,呼吸困難は緩徐な経過で増悪していった。当科初診時に披裂部の余剰粘膜が吸気時声門部に引き込まれていた。以上より声門狭窄あるいは声門上狭窄が原因の吸気時陰圧により披裂部粘膜が伸展し,後天的に余剰粘膜になったと推定した。

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