日本気管食道科学会会報
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特集:気管食道領域における漢方医学
喘息治療と漢方医学
伊藤 隆
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2009 年 60 巻 5 号 p. 417-423

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抄録
喘息に対する漢方治療は現代もなお重要な役割がある。その適応は副作用あるいは臨床効果がみられないなどの理由により吸入ステロイド薬による効果を期待し難い場合である。またメンタルヘルスと易感染性の問題のある症例もよい適応である。こうした患者に対する漢方薬の処方選択に関するエビデンスの蓄積は未だ充分ではなく,伝統医学的な診断方法がなお有用である。原則として発作時には麻黄剤を,発作の予防のためには柴胡剤をそれぞれ処方する。発作時に用いる麻黄剤としては麻杏甘石湯が基本であり,発汗のある時期に用い,脱水の時期には現代医学的対応が必要である。柴胡剤には,抗アレルギー作用,抗炎症作用だけでなく,精神面に対する作用がある。喘息発作の誘因あるいは合併症としてのうつ状態,不安に対しては柴胡剤あるいは半夏厚朴湯などを併用していく。体重減少あるいは呼吸機能障害を認める場合には補剤を検討する。麦門冬湯に関して,後輩医師が最新の薬理学的研究成果に対する理解が浅いために,伝統医学的な立場からは誤った使い方をした事例をあげ,西洋医学と東洋医学の調和した学習が必要なことを述べた。
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