日本気管食道科学会会報
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原著
ラットにおける一側性反回神経麻痺に対する塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)を用いた自家筋膜移植術の効果
永井 浩巳西山 耕一郎木村 祐田畑 泰彦岡本 牧人
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2009 年 60 巻 5 号 p. 424-432

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抄録
声帯内自家筋膜移植術の長期経過は,自家筋膜が再吸収されるのにもかかわらず良好である。これは,この移植により筋膜を細胞と足場として移植部に提供でき,このことが生体内の調節因子を活性化し,喉頭の再形成がされると推測している。今回われわれは,自家筋膜と,成長因子のひとつであるb-FGFをともに移植し,移植筋膜の残存の向上と喉頭組織の変化を検討した。ラットを用いて実験し,筋膜とb-FGFを浸透させたゼラチンハイドロゲルシートを喉頭内に移植した。移植後12週間で,b-FGF投与群は,移植筋膜の残存と脂肪組織の大きさが非投与群に比べて有意に大きかった(p < 0.05)。この結果から,脂肪組織の増大は,b-FGFによる脂肪新生が考えられ,移植筋膜の残存は,移植筋膜が組織の再建に関与していると思われた。われわれは,この移植術が一側性反回神経麻痺の治療として有益である可能性を示唆した。
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