日本気管食道科学会会報
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原著
化学放射線同時併用療法の晩期有害事象が摂食・嚥下に与える影響について
小松 正規石戸谷 淳一池田 陽一塩野 理河野 敏朗佃 守
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2010 年 61 巻 1 号 p. 8-14

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抄録
化学放射線同時併用療法の晩期有害事象が摂食・嚥下に与える影響について検討した。頭頸部癌進行例で化学放射線療法を行った患者のうち,組織学的CRが得られた後,1年以上経過した症例を対象とし,QOLのアンケートと嚥下内視鏡検査 (VE) を行った。アンケートはQOL-RTIの日本語版を用い,そのうち摂食・嚥下に関する13項目について検討した。VEでは静止時での咽喉頭の観察と着色水テストを行い調査した。調査しえた症例は22例で,アンケートによる比較では,対照に比べ治療群で有意に摂食・嚥下に関するQOLの低下がみられた。項目別では唾液の量,唾液の質,味覚,固形物の嚥下に関する項目で有意差がみられた。VEでは,治療群では静止時にも喉頭蓋野や下咽頭貯留がみられる症例が存在し,着色水テストを行うと,約4割の症例で反射惹起遅延や下咽頭貯留が認められた。QOLスコアやVEの結果に影響を与える因子の検討では有意な項目は認められなかった。化学放射線治療後の患者では潜在的な嚥下機能低下が存在すると考えられ,検査として着色水テストが有効であった。
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