今回われわれは,喉頭軟骨肉腫に対する喉頭部分切除後,レティナ
®やティチューブ
®装着下に上気道感染を契機とする喉頭の広範な腫瘤性病変を繰り返した症例を経験した。
症例は59歳女性。2001年に出現した嗄声の精査により左側声帯粘膜下腫瘤を指摘され,喉頭微細手術により喉頭軟骨肉腫が疑われた。2003年3月に当科受診し同年5月に喉頭部分切除術,喉頭気管皮膚瘻形成術を施行した結果,low-gradeの喉頭軟骨肉腫と診断された。術後はティチューブ
®を使用していたが,同年7月に上気道炎を契機とする声帯後方の腫瘤性病変を認めた。軟骨肉腫の再発を疑い同年8月に喉頭微細手術下に可及的切除を施行したが,病理診断は肉芽組織だった。2005年10月にも上気道炎罹患後に喉頭全体にわたる腫瘤性病変を認め,再度喉頭微細手術を施行したが,病理診断は肉芽組織であった。2007年1月にも上気道炎罹患後に喉頭の腫瘤性病変を認めたが,再度喉頭微細手術を施行した結果は炎症性変化のみであった。その後は気管カニューレを使用せずに気道が安定したため,同年6月に喉頭気管皮膚瘻を数mmまで縮小した。
いずれの状況でも,カニューレの物理的刺激と気道感染の重複が原因であったと推定した。
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