日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
61 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 千年 俊一, 濱川 幸世, 前田 明輝, 梅野 博仁, 中島 格
    2010 年 61 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2010/02/10
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル 認証あり
    中咽頭癌に対し切除再建術を行った場合,切除後に残る組織が術後嚥下障害に対してどの程度代償的に機能するかを予測することが重要である。中咽頭癌切除再建術症例の咽頭後壁運動をもとに残存組織の機能代償について検証した。対象は,根治治療を行った照射歴のない中咽頭癌再建術症例のうち,喉頭温存した52例である。嚥下造影検査の側面像で,安静時と嚥下時の各静止画から嚥下時の後壁運動率を算出し正常例と比較した。さらに,年齢別,再建法別および鼻咽腔閉鎖機能別に比較した。その結果,対象の後壁運動率は正常に比べ術後3カ月以降で高値を示した。60歳未満は60歳以上に比べ術後3カ月以降で後壁運動率が高くなる傾向にあった。PMMC症例ではfree RAM症例に比べ術後3カ月および術後6カ月に後壁運動率が有意に高値を示した。さらに,鼻咽腔閉鎖機能良好例では鼻咽腔閉鎖機能不良例と比べて術後3カ月と6カ月に後壁運動率が有意に高値を示した。結論として,残存組織は切除後の容量不足を補う形で機能代償すると推察された。特に,嚥下圧を高めやすい環境下では大きな機能代償が期待できる。また,この機能代償は術後3カ月過ぎに顕著になる傾向があった。
  • 小松 正規, 石戸谷 淳一, 池田 陽一, 塩野 理, 河野 敏朗, 佃 守
    2010 年 61 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2010/02/10
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル 認証あり
    化学放射線同時併用療法の晩期有害事象が摂食・嚥下に与える影響について検討した。頭頸部癌進行例で化学放射線療法を行った患者のうち,組織学的CRが得られた後,1年以上経過した症例を対象とし,QOLのアンケートと嚥下内視鏡検査 (VE) を行った。アンケートはQOL-RTIの日本語版を用い,そのうち摂食・嚥下に関する13項目について検討した。VEでは静止時での咽喉頭の観察と着色水テストを行い調査した。調査しえた症例は22例で,アンケートによる比較では,対照に比べ治療群で有意に摂食・嚥下に関するQOLの低下がみられた。項目別では唾液の量,唾液の質,味覚,固形物の嚥下に関する項目で有意差がみられた。VEでは,治療群では静止時にも喉頭蓋野や下咽頭貯留がみられる症例が存在し,着色水テストを行うと,約4割の症例で反射惹起遅延や下咽頭貯留が認められた。QOLスコアやVEの結果に影響を与える因子の検討では有意な項目は認められなかった。化学放射線治療後の患者では潜在的な嚥下機能低下が存在すると考えられ,検査として着色水テストが有効であった。
症例
  • 山内 彰人, 木村 美和子, 萩澤 美帆, 二藤 隆春, 田山 二朗
    2010 年 61 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2010/02/10
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは,喉頭軟骨肉腫に対する喉頭部分切除後,レティナ®やティチューブ®装着下に上気道感染を契機とする喉頭の広範な腫瘤性病変を繰り返した症例を経験した。
    症例は59歳女性。2001年に出現した嗄声の精査により左側声帯粘膜下腫瘤を指摘され,喉頭微細手術により喉頭軟骨肉腫が疑われた。2003年3月に当科受診し同年5月に喉頭部分切除術,喉頭気管皮膚瘻形成術を施行した結果,low-gradeの喉頭軟骨肉腫と診断された。術後はティチューブ®を使用していたが,同年7月に上気道炎を契機とする声帯後方の腫瘤性病変を認めた。軟骨肉腫の再発を疑い同年8月に喉頭微細手術下に可及的切除を施行したが,病理診断は肉芽組織だった。2005年10月にも上気道炎罹患後に喉頭全体にわたる腫瘤性病変を認め,再度喉頭微細手術を施行したが,病理診断は肉芽組織であった。2007年1月にも上気道炎罹患後に喉頭の腫瘤性病変を認めたが,再度喉頭微細手術を施行した結果は炎症性変化のみであった。その後は気管カニューレを使用せずに気道が安定したため,同年6月に喉頭気管皮膚瘻を数mmまで縮小した。
    いずれの状況でも,カニューレの物理的刺激と気道感染の重複が原因であったと推定した。
  • 寺田 友紀, 坂口 明子, 佐伯 暢生, 宇和 伸浩, 佐川 公介, 毛利 武士, 阪上 雅史
    2010 年 61 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2010/02/10
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル 認証あり
    頭頸部領域において悪性線維性組織球腫 (MFH) は比較的頻度の少ない疾患で,喉頭に原発するものは稀である。今回われわれは,非常に稀な喉頭声門上部に発生したMFH症例を経験したので報告する。
    症例は69歳男性,2006年5月,嗄声を主訴に喉頭癌疑いで当科を紹介受診した。右仮声帯から喉頭蓋喉頭面に広がる隆起性腫瘍を認め,頸部リンパ節転移は認めなかった。生検の結果MFHと診断した。喉頭温存を目的に化学放射線療法を施行したが腫瘍は残存し,2006年8月,喉頭全摘術を行った。術後3年2カ月経過した現在,局所再発,遠隔転移はなく経過観察中である。
  • 鈴木 友宜, 西蔭 徹郎, 永井 鑑, 中島 康晃, 川田 研郎, 星野 明弘, 宮脇 豊, 岡田 卓也, 河内 洋, 有泉 陽介, 河野 ...
    2010 年 61 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2010/02/10
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル 認証あり
    声門下狭窄は,気管切開や気管内挿管の合併症としての報告例が多い。しかし,近年ミニトラックTMなどの普及に伴い,輪状甲状間膜穿刺後の声門下狭窄例が報告されるようになってきた。今回,食道癌術後に挿入したミニトラックTMが原因と考えられる遅発性声門下狭窄をきたし,さらに気道軟骨炎による気道狭窄に進展した1例を経験した。一般的に輪状軟骨の損傷・気管粘膜への刺激・感染などが原因と考えられ,その予防には愛護的な挿入手技と,気道粘膜への刺激や感染のリスクを少なくするために早期抜去を心がける必要があると考えられた。
  • 安慶名 信也, 永原 國彦, 森谷 季吉, 奥田 匠, 本多 啓吾, 矢間 敬章, 夜陣 真司
    2010 年 61 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2010/02/10
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル 認証あり
    耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が,気管癌に遭遇する機会は殆んどない。その初発症状は,気管狭窄,喘鳴,血痰などであり,他科において気管支炎や気管支喘息として診断や治療を受けることが多い。このために診断が遅れ,不幸な転帰をとることも少なくない。今回,われわれは,健康診断で発見された,気管腺様嚢胞癌の症例を経験したので報告する。症例は39歳女性,胸部の異常陰影を指摘され,某大学病院呼吸器外科に紹介された。胸部CTにおいて,前縦隔と右頸部に結節状の陰影を認めた。さらに穿刺吸引細胞診検査により,前縦隔の腫瘤は胸腺腫,右頸部の腫瘤は腺様嚢胞癌と診断された。気管支鏡検査においても,声門直下から第7気管輪にいたる間に,腫瘍の浸潤が確認された。同部位からの生検でも,腺様嚢胞癌と診断された。また,PET/CT検査では,前縦隔と甲状腺右葉の背側に,FDGの集積を認めた。MRIでは,気管の右外側壁から,気管の内外に浸潤する腫瘍を認めた。この腫瘍に対する治癒切除術に際して,アプローチは気管支鏡で腫瘍を認めなかった第7気管輪の下方より開始したが,切除断端は陽性であった。切除マージンは迅速病理を繰り返して決定したが,さらに3気管輪の追加切除を要した。また,右反回神経は,腫瘍に巻き込まれており,上方で甲状軟骨を切除し,喉頭内でその分枝を求めて,頸神経ワナとの吻合により再建した。また,食道への浸潤も全層にわたり認めた。しかし,顕微鏡下に粘膜のみを残す切除を,3 cmあまりにわたって施行することにより対処できた。最終的に気道の切除は,右側では声門の直下で,左側では輪状軟骨の下端から第10気管輪までの切除を要した。気管の再建は,鼻中隔軟骨を用いたDP皮弁により,三段階に分けて形成した。現時点で再発を示唆する所見は認めず,音声は良好 (MPT 20秒) である。silent aspirationもなく経過は順調である。
  • 近 範泰, 宮崎 達也, 横山 洋三, 北岡 斎, 石畝 亨, 横山 勝, 石橋 敬一郎, 石田 秀行, 佐藤 恵子, 屋嘉比 康治
    2010 年 61 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2010/02/10
    公開日: 2010/02/25
    ジャーナル 認証あり
    スプーンを誤飲した神経性食思不振症の稀な1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
    症例は26歳,女性。神経性食思不振症にて近医に通院していた。自己嘔吐の際スプーンを用いたところ,誤飲したため当院受診。腹部X-Pではスプーンを胃内に認めた。当院消化器内科にて上部消化管内視鏡施行。オーバーチューブ挿入後,ツーチャンネル内視鏡を使用しスネアと把持鉗子でスプーン摘出を試みたが,摘出に至らなかった。観血的摘出を考慮し当科紹介。紹介時胸部X-P上スプーンを胸部食道内に認めた。全身麻酔下に,上部消化管内視鏡を施行した。スネアをスプーンの柄の頸部にかけ,把持鉗子で柄を把持した。オーバーチューブ内にスプーンの柄を納め,約13 cm×3 cmのスプーンを摘出した。術後合併症なく退院した。食道異物は巨大なものになると咽頭麻酔のみでの摘出は困難であり,全身麻酔下に内視鏡的に摘出することが有効と思われた。
用語解説
feedback
Top