抄録
膝蓋骨を原発として診断に難渋したBrown腫瘍の1例を経験した。症例は43歳女性。右膝蓋骨腫瘍で当院整形外科を受診し,骨腫瘍の精査加療目的で手術を施行されたが,腫瘍の病理所見は骨巨細胞腫の疑いであった。血液検査所見で血清Ca値,血清iPTH値の上昇を認め,頸部超音波検査で頸部腫瘤を指摘され,原発性副甲状腺機能亢進症の疑いで当科紹介受診となった。当科で更なる精査の結果,甲状腺乳頭癌と副甲状腺腫瘍の合併が判明した。整形外科入院中で本人の強い継続加療希望のため当科で甲状腺全摘出術,副甲状腺全摘出術を施行した。病理診断は甲状腺乳頭癌,副甲状腺腺腫であり,結果として原発性副甲状腺機能亢進症に伴う膝蓋骨Brown腫瘍の診断に至った。Brown腫瘍は原発性副甲状腺機能亢進症に伴う骨病変で非常に稀な疾患であり,臨床検査所見や病理所見を合わせた総合的な診断が必要となる。また,骨悪性腫瘍との鑑別を要するため,高Ca血症と骨腫瘍を合併した症例においては本疾患も念頭に置くことが重要であると考えられた。