2014 年 65 巻 3 号 p. 260-264
Zenker憩室は下咽頭食道移行部に発生する圧出性の憩室である。欧米での報告例は多いが,本邦では比較的まれな疾患である。憩室固定術は欧米では憩室切除術と同様に広く行われているが,わが国では憩室切除術が主に施行されており,憩室固定術の報告例はない。今回,Zenker憩室に対し憩室固定術を行い良好な結果が得られた1例を経験したので文献的考察とともに報告する。症例は78歳の男性で,強度な嚥下障害を主訴に当院に紹介された。精査にてZenker憩室と診断され,輪状咽頭筋切開を伴う憩室固定術を受けた。術後経過は良好で,術後2年9カ月経た現在も再発なく経口摂取は良好である。憩室固定術は簡便で合併症の少ない術式であり,高リスクの高齢者症例においては有用な術式と考えられる。