2014 年 65 巻 3 号 p. 272-277
胸腺様分化を示す癌carcinoma showing thymus-like differentiation (CASTLE) は,甲状腺内あるいは頸部軟部組織に発生する稀で組織診断が困難な悪性腫瘍である。組織像は胸腺上皮性腫瘍と類似し,また甲状腺の扁平上皮癌や未分化癌との鑑別診断を要する。緩慢な増殖をするとされ,より良好な経過をとる。症例は64歳男性。CTにて甲状腺左葉に接する1.5 cm大の辺縁不整の腫瘍を認め,確定診断と根治切除目的にて腫瘍切除術を施行。直接浸潤を認める食道筋層と左反回神経の一部を合併切除した。病理学的に甲状腺近傍の異所性胸腺より発生したB3型胸腺腫と当初診断し,切除断端に腫瘍細胞を認めたため,術後照射と抗癌剤による補助治療を行った。その後摘出標本の再検討の結果CASTLEと最終診断した。他病死するまでの術後3年5カ月間に再発を認めなかった。甲状腺腫瘍の組織診断において本腫瘍の鑑別を念頭におくように留意したいと考える。