頸部食道癌手術における頸部手術視野では完全な上縦隔郭清は困難である。そのために上縦隔リンパ節郭清を必要とする場合は胸骨縦切開の付加や右開胸食道切除を選択することになる。しかし転移診断は現在なお困難で,より低侵襲でまた106recLリンパ節の確実な郭清を行える手段があれば望ましい。ここではcadaverを用いた気縦隔下の上縦隔郭清法の検討について述べる。左頸部やや上方に4cmの襟状切開を置き直視下に開始する。左反回神経の露出後にwound retractor XSを挿入し,単孔デバイスを装着し気縦隔操作に移行,左鎖骨下動脈,胸管に沿って食道左側背側を剥離し,気管壁に沿って左反回神経背側を剥離,気管膜様部から食道を遊離,最後に左反回神経の腹側の106recLリンパ節を郭清した。気縦隔にて良好な視野展開,剥離が可能であった。6献体での検討では全例で左反回神経および胸管を同定しえた。また左反回神経から気管への索状物も後半例の3例で同定しえた。気縦隔下の上縦隔郭清は経胸腔操作を要せず,低侵襲なため有用なアプローチ法と思われた。