食道癌術後の反回神経麻痺の発生頻度,自然回復率,発生に影響した要因などについて検討した。対象は2011年1月から2013年12月の3年間の手術症例のうち,術前術後に耳鼻咽喉科で反回神経麻痺の有無を確認できた59例について検討した。術後抜管時には,約半数の29例 (49.2%) に反回神経麻痺を認め,ほとんどが正中位固定であった。術後反回神経麻痺を認めた29例中18例で麻痺の回復を認め,術後半年以降も麻痺の残存したものは食道癌全体59症例中11例 (18.6%) であった。抜管時に反回神経麻痺を認めた群と認めなかった群に分け,術前因子 (年齢,術前血清アルブミン値,BMI,占拠部位,stage,術前治療),術中因子 (術式 (右開胸開腹か胸腔鏡下補助),リンパ節郭清 (2領域か3領域),手術時間,出血量),術後因子 (挿管期間,#106recへの転移) について検討した。2群間比較では有意差を認めず,術後の反回神経麻痺の有無を目的変数として,上記要因を説明変数として行った多変量解析においても有意差を認めなかった。術後に反回神経麻痺の回復した群と麻痺の残存した群において,麻痺の残存した群のBMIは高値であった (p<0.05) 。また手術時の年齢での検討では,70歳以上で麻痺の発生が高くなる傾向があり,高齢者の手術にはより注意が必要と考える。