日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
原著
動的MRIを用いた嚥下咽頭期における中咽頭形態変化の解析
原口 正大
著者情報
ジャーナル 認証あり

2015 年 66 巻 6 号 p. 391-399

詳細
抄録

[目的]嚥下の咽頭期における咽頭収縮筋運動による咽頭周囲組織の受動運動を解明する。[対象と方法]健常成人30名を対象とした。3.0テスラ全身MRIのT2強調画像を使用し,上下歯列と第二頸椎前縁下端を通る水平断面で嚥下運動を連続撮影した。安静時と咽頭最大収縮時の水平断画像を選択した。各画像における咽頭枠組みの面積から咽頭収縮率 (PCR) を算出し解析の指標とした。PCRに対する,①年齢,②Body mass index (BMI),③肉眼的な口蓋扁桃の大きさ,④安静時の口蓋扁桃の面積,⑤嚥下による外頸動脈の移動距離,⑥嚥下による副咽頭間隙の面積変化の相関関係を検討した。[結果]年齢とPCRには弱い相関関係があるも有意差はなかった (r=-0.21, r2=0.045,p=0.26) 。BMI (r=-0.52,r2=0.27,p<0.05) および口蓋扁桃の面積 (r=-0.55,r2=0.30,p<0.05) とPCRは中等度の負の相関関係にあり有意差があった。外頸動脈の移動距離 (r=0.45,r2=0.21,p<0.05) および副咽頭間隙の面積変化 (r=0.54,r2=0.29,p<0.05) とPCRは中等度の正の相関関係にあり有意差があった。[まとめ]嚥下咽頭期には,咽頭収縮運動に伴う受動運動として咽頭周囲組織は形態変化し咽頭方向へ移動した。BMI,両側口蓋扁桃の面積,外頸動脈移動距離および副咽頭間隙の面積変化は,咽頭収縮に伴う中咽頭の形態変化に関与する因子であることが推察された。

著者関連情報
© 2015 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top