日本気管食道科学会会報
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症例
特発性舌下間隙血腫の1例
阿部 康範三谷 壮平羽藤 直人
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2018 年 69 巻 4 号 p. 261-267

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抄録

特発性舌下間隙血腫は非常に稀な疾患であるが,気道閉塞をきたす危険性が高く,気道管理が非常に重要な疾患である。今回,特発性舌下間隙血腫の1例を経験したので報告する。症例は60歳代後半の女性で当院内科に成人T細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の終末期として入院中であった。症状緩和目的のステロイドでのハーフパルス療法後より咽頭痛,嚥下困難感,口腔内出血を認めたため当科紹介受診した。当科初診時,舌根部に粘膜下血腫による腫脹を認めたが,気道は保たれていた。画像検査から舌下間隙血腫と診断し,4時間後に再度確認したところ血腫は明らかに増大しており,造影CTでその中央部に出血点と思われる造影剤の漏出を認めたため,気管切開と止血,血腫除去術を施行した。術後,血腫は消退傾向を示していたが,術後3日目よりATLLの中枢浸潤と考えられる意識レベルの低下を認め,術後14日目に永眠された。特発性舌下間隙症例に対して,気道に注意して経過をみることで比較的安全に気道確保を行うことができた。出血と血腫に対しては,危険因子に対する治療を行うことで軽快することが多いが,合併症には注意が必要である。

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