2021 年 72 巻 1 号 p. 23-29
食道癌肉腫は食道癌の中で0.5~2.8%と比較的稀な組織型である.今回,当施設において2017年7月から同年11月までの約5カ月間に,病理学的に食道癌肉腫と診断された食道切除症例4例について報告する.全例男性,平均76歳.咽頭違和感や胸部のつかえなどの症状を契機に診断された症例が3例,無症状が1例であった.術前の生検で癌肉腫と診断された症例は2例であり,他2例は扁平上皮癌と診断されたが,その特徴的な肉眼形態から癌肉腫も鑑別に治療を行った.5-FU/CDDPによる術前化学療法を行った症例は1例で,ほか3例では術前療法は行わなかった.全例に郭清を伴った胸腔鏡下食道亜全摘術が施行された.病理学的腫瘍深達度は全例cT1bであり,1例で2群リンパ節への転移を認めた.平均観察期間2年2カ月経過し,全例無再発生存中である.有茎性の食道腫瘍を認めた場合には癌肉腫であることを念頭に置いて診断を進める必要がある.現時点で定まった食道癌肉腫に対する標準治療は存在しないが,リンパ節郭清を伴う食道切除術を中心とした治療が適当と考えられる.