2021 年 72 巻 3 号 p. 115-123
小児気管切開児のカニューレ抜去は成人と比較し困難と言われているが,その原因のひとつに,「気管孔上の肉芽」や「気管孔上軟骨の内腔への陥入」が生じやすいことがあげられる。そこで,過去5年間にカニューレ抜去に至った48症例を対象に,気管切開期間・カニューレの種類・ADLなどによる,気管孔上の肉芽・陥入の発症率,および「気管孔上部形成術」の適応と効果について検討を行った。48症例のうち手術が必要だったものは27例で,うち18例に肉芽,16例に陥入がみられた(7例で重複)。気管カニューレ留置期間の長さや気管切開時の年齢については,手術群・非手術群に有意差を認めなかったが,カニューレ抜去時の年齢がより幼少である場合に,手術が必要となる症例が有意に多かった。またシリコン製のカニューレを使用している症例に比べ,より硬いポリ塩化ビニル製のカニューレを使用していた場合に,有意に手術が必要であった。また誤嚥や唾液の垂れ込みが存在する症例で,有意に肉芽発生率が高かった。比較的容易な手技でも気管孔上の狭窄は改善されることが多く,カニューレ抜去につながっていた。確実な診断と適切な治療が重要と考えられた。