2021 年 72 巻 4 号 p. 231-235
内転型痙攣性発声障害(AdSD)とは甲状披裂筋を責任筋とする局所ジストニアとされており,チタンブリッジ(TB)を用いた甲状軟骨形成術2型(TP2)の有用性が報告されている。TBの最小開大幅は2.0mmであり,2個挿置が推奨される。TP2後,声量不足を訴え,再手術を施行した症例を経験した。症例は30歳代女性,AdSDの診断で前医にて201X年にTP2を施行され,2.0mmのTBを2個挿置された。術後,声が小さいことを主訴として,201X+3年に当科にて再手術を施行した。術中所見で尾側のTBには異常は認められなかった。頭側のTBは左右の羽部の孔で破損していたが,開大幅2.0mmは維持されていた。両方のTBを抜去後,音声の悪化を確認した。尾側のみ開大幅2.0mmのTBを挿置すると,開大幅は尾側2.0mm,前連合部約1.5mm,頭側約1.0mmとなった。Mora法0/21,G0,声量は増大し,術後14カ月維持している。2個挿置が基本であるTBだが,尾側のみ開大幅2.0mmのTBを挿置することにより,製品最小開大幅2.0mm以下の開大幅とすることが可能であった。1個挿置は推奨されないが,本症例のごとく開大幅2.0mmでも過剰の際は,試すべき一手法と考えた。