2021 年 72 巻 6 号 p. 321-328
バルーン法は輪状咽頭筋機能不全を有する患者に対し用いられるリハビリ手技の一つである。今回われわれは舌癌治療後に重度の嚥下障害を生じ,数年間嚥下障害が遷延した症例に対して,バルーン拡張法を行い良好な効果が得られたので報告する。症例は72歳男性。当院初診から約4年前,舌癌に対し他院で左舌亜全摘術,両頸部郭清術,遊離皮弁再建,気管切開術,術後放射線化学療法が施行された。術直後より嚥下障害を認めており,治療終了後には嚥下不能となった。のちにお楽しみ程度の嚥下機能まで改善したが,経口摂取の強い希望があり当科へ紹介となった。嚥下造影検査では,咀嚼や食塊の送り込みなどの口腔期の障害に加えて,喉頭挙上不全や食道入口部の開大不全を認めた。嚥下障害の主病態が食道入口部の開大障害と考え,透視下でバルーン間欠拡張法を行ったところ即時効果が得られたため,後日リハビリ入院し,バルーン法を指導した結果,ペースト食を3食摂取可能となった。嚥下障害が遷延した症例に関して嚥下障害の病態把握とバルーン法などの治療的リハビリ手技を行うことで機能改善が得られる症例が存在することが示唆された。